桜前線もかけ足で過ぎ去り、あっという間に緑の勢いが増してきました。ぼんやりピンク色だった木の芽もどこへやら。「どこにこんな色がひそんでいたのか」と思うくらい鮮やかな新緑が、人の心を外へ外へと誘います。
◆自然が「先生」だった
ゴールデンウィークの行楽をはじめ、遠足や運動会など、五月は子どもたちの遊び場が本格的にアウトドアへと移る季節。夏へ向かって、好奇心がむくむくと雲のごとく湧いてくるのもこの時期です。思えば幼いころ、暖かくなって、原っぱをかけまわることの待ち遠しかったこと。真新しいズックを履き、覚えたての自転車に乗ればエンジン全開。町内探検のはじまりです。土のにおい、空の青さ、風を受け止める心地よさ。時には葉っぱで指に傷を作ったり、ツツジの蜜が砂糖のように甘いことに驚いたり…。身のまわりの自然にはいくつもの発見がひそんでいて、その感動からたくさんのことを学んだ氣がします。
◆虹を見たかい?
中でも、子ども心に不思議だったのは、雨上がりの「虹」。五月晴れのさなか「お天氣雨」が降ると、空には七色の美しい橋がかかるものでした。今でこそ、虹は、空氣中に存在する小さな水滴に、太陽の光が反射して七色に見えるものだということを知っていますが、空が大きかったあのころは、ランドセルを背中に「虹は何でできているんだろう、どうしていつも見えないのかな…」と首をひねるばかり。傘も放り出して、虹の根っこを探しに行きたいと願ったものです。なぜか、幸せがそこに待っているような氣がして…。
◆虹のかけらの琥珀糖
うすむらさきに空色、桃色…。「小町ごおり」は、その虹のかけらのようなお菓子。見た目は氷砂糖のようですが、口に含むとほのかなフルーツ味とともに、しゃりしゃりと溶けてなくなる琥珀糖※です。それはまた、懐かしい思い出の断片のようでもあり、ひとつ、またひとつとほおばる度に、かげふみ遊び、サイダーの泡、「夕方までに帰っておいで」という母の声…そんな遠い日の情景がよみがえってきます。こんぺい糖ともドロップキャンデーとも違う、どこか懐かしさの漂う透明菓子。五月の空に響く子どもたちの元氣な声が、ふと幼いころの自分と重なって聞こえてきます。
※琥珀糖…煮とかした寒天に砂糖を加えて煮つめ、固めてかきわったお菓子。
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