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◆情緒あふれる紅橙色
 秋は豊穣の季節。ぶどう、なし、栗、芋…そして柿。正岡子規が、〈柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺〉と詠んだように、柿の生る風景はとくに日本情緒にあふれています。抜けるような青空に、つややかな紅橙色の実がたわわに実っている光景を想像してみてください。なごやかな里山の情景に、そのコントラストの鮮やかなこと。頭上を飛び交う鳥たちが、悪戯に「つまみぐい」したくなる気持ちも分かるような気がしますね。
◆「渋柿」と「甘柿」
しかし、赤くておいしそうなのに、食べてみると「渋い!」ということもよくあります。元来、日本に自生していたのは「渋柿」の品種のみ。私たちが普段口にする「甘柿」は、人の手で改良された品種なのです。その「渋さ」の理由は、柿が果実内に、苦味のもとであるタンニンを溶かしこんでいるため。種が熟さないうちは鳥や動物たちに食べられないように、と柿が自己防衛しているわけです。種の運び時になって初めて、タンニンの不溶化が進み、渋みが抜けていきます。
柿の頭に朱のさす時期が摘みごろですが、その際、木のてっぺんに柿をいくつか残すことが収穫のルール。鳥たちにとっては取り分が確保され、柿にとっては繁殖の手立てが残され、実に理にかなった慣習といえます。
◆天然の甘味「干し柿」
 日本人と柿とのつきあいは実に長く、古くから甘味源として珍重されていたようです。平安時代にはすでに干し柿が考案されており、熟柿とともに、祭礼の菓子として用いられていたとの記録もみられます。
渋柿が多く自生する東日本では、干し柿は「冬の風物詩」。都市部ではなかなか見られなくなりましたが、吐く息も白い朝、軒先にぶら下がる柿ののれんは、茶色い景色の中にひときわ映える「差し色」です。鮮やかなオレンジ色が飴色に変わり、時間が天然の甘みをじっくり引き出したころ、干し柿は食べごろとなります。
「出羽の柿(いでわのみ)
は、そんな干し柿そっくりなお菓子。白小豆のあんこを柿のペーストでくるみ、シンプルな甘さを大切にしました。上品だけれど、お茶と一緒にほおばりたい素朴さもたっぷり。懐かしい味が広がります。

※季節商品につき、販売していない月がございます。

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